フィルターバブルをのりこえ,シナジー効果をえる.


空気を読まない.データを読む.


メディアリテラシーとデータサイエンス メディアリテラシーとデータサイエンスは,2020年代を生きる私たちに必須のリテラシーです.一人ひとりが良いモノやサービスを効率的に生み出すための道具であるからです.

 フェイスブックやSNSで自分の考えの正しさを証明し,アマゾンのアルゴリズムで勧められた本で考えをさらに考えを強化する.知らず知らずのうちに誰もがフィルターバブルや認識共同体の中に落ち込んでいます.考えは一人ひとり違ってむろんよいのですが,異なる考えの人どうしの間にコミュニケーションがなければなりません.過去の文化や言葉を共有知識として引きつぐもっと大きな共同体の中に属しているという感覚が必要です.

 共同体の中の自分の立ち位置を考えるために必要な知識がメディアリテラシーです.もう一つ,空気を読むのではなく,データを使って客観的に判断することも必須です.これがデータサイエンスです.

止まらないデジタル技術 適応能力の限界を超え,デジタル化が社会を変えつつあります.あらゆる仕事の業務が,極端に言えば,プログラムを作る仕事か,逆にパソコンに数字を打ち込むだけの仕事かの両極に分かれています.かつて私が教員になりたてのころ,A3の紙に横線の入った答案用紙を配って定期試験を行い,紙に書かれた学生の文章を,1週間かけて読み,成績を一つひとつ手入力したことがありました.今では,学習支援システム(LMS)を使い,定期試験の採点から成績登録まで23時間で終わります.

 この違いをもたらしているのが,デジタル技術です.とくに,クラウド技術は,日常の仕事や生活の変化に直接影響を与えています.私たちの日常的な作業をクラウドコンピュータに代わりに行ってもらうことで,ありとあらゆることが短時間に簡単に終えることができるようになりました.どれもこれまでコンピュータ単独では難しかったことばかりです.

 便利で新しい機能にその都度適応し関わっていく方がむろん生産的になりますが,無数の新しい技術を毎日取り込まなければなりません.技術の方が,私たちの意識よりも先に,便利な現実を実現し始めているのです.次から次へとやってくる便利な技術を体系的に身につけていかなければ追いつけなくなっているように思えます.

データサイエンス 私たちの日常生活に必要なデータサイエンスは,統計学とAIです.研究者にとっては,ディープラーニングの技術や数学が必要ですが,私たちはそれらを知らなくても,統計学やAIを使いこなすことができます.本ホームページでは,データサイエンスを統計学とAIに限定しています.

 クラウド技術のおかげで,分析サービスの効率も劇的に向上しました.まとまったデータがありさえすれば,1週間程度でも実用的なレベルの分析ができます.

 データサイエンスは,ビジネスモデルの開発にも使えます.人間のもっている直感的な思考を,デジタル(プログラム)に変え分析し,直観を実用に直結させることができます.(直観力に優れやる気があれば)学部学生でもできます.

 日本の大学に,データサイエンス学部が一気に増えました.もっともすぐれたカリキュラムと言われる滋賀大のデータサイエンス学部の第一期卒業生の就職先を見ると,進取の気性に満ちた企業が並んでいます.データサイエンスを勉強した学生を採用してみるか,といった企業側の姿勢が強く感じられます.

 

 私はメディアリテラシーを人の心の側から見ています.デジタル技術は刻一刻変わっていきますが,人の心は変わりません.心の側からとらえた方が客観的な説明になると考えています.それでは,メディアリテラシーとデータサイエンスの組み合わせを考えてみましょう.